本を読む時間がない人必見!〜輪読会の効果を最大限アップするための秘訣〜
はじめに
こんにちは、アノテーション テクニカルサポートチームの中野です。
弊社では、普段からリモートワークで仕事をしております。
リモートワーク下でも実施できる、輪読会の実践方法についてのご紹介です。
チームメンバーが事前に本を読む時間がとれなくても大丈夫な方法でおこなえるように輪読会の運営を考えました。
こちらの方法が、すべてのチームへ当てはまるとは限りませんが、チームビルディングやチームメンバーの専門性向上の参考になっていただければ幸いです。
※こちらの画像は、私のチームで実際にやってみた際にまとめた資料の例です
輪読会とは
輪読会の定義は色々ありますが、主に以下のような活動のことを指します。
人々が集まって、同じ教科書などの本を読み、その内容について意見を交わすことを意味する語。事前に決められた担当者が、本の内容を訳したりまとめたりしてから、他の参加者が理解できるように発表する形式がとられることも多い。
「輪読会(りんどくかい)」の意味や使い方 Weblio辞書より
また、輪読会のスタイルの例として、以下のようなものが挙げられます。
- 事前読書型: 事前に決められた担当者が読んでまとめた内容を発表(担当者ではない人も読んでくる)
- メリット
- 事前に読む箇所が決まっている
- 本を読み進めていくスピードが一定
- デメリット
- 輪読会以外の時間(業務時間内・外)で時間確保が必要
- 特定の担当者へ発表準備の負担を強いる
- 担当者のみが理解してしまう場合も考えられる
- メリット
- 当日読書型: 輪読会の当日にメンバー全員で読書して議論
- メリット
- 輪読会以外の時間(業務時間内・外)で時間確保は必要ではない
- 特定の担当者への発表準備の負担がなくなる
- デメリット
- 読み進めるスピードが一定ではない
- スピードが遅いと以前読んだ内容を忘れてしまう
- 輪読会の進捗や理解度は、ファシリテータ(司会)の力量にある程度依存する
- メリット
今回、私のチームでは、「当日読書型」の輪読会を実施してみました。
「当日読書型」を選定した理由は、輪読会のための業務時間内・外の事前の時間確保を不要にしたかったことと、チームメンバーの双方向のコミュニケーションを重視したいと考えたからです。
また、事前に読むスタイルの場合は、メンバーのモチベーションにも依存するため、よりライトにやりやすい方法でモチベーションを維持したいという思いから選定しました。
以下に、私のチームで輪読会をやることとなった具体的な背景についてご紹介します。
やることになった背景や目的
私のチームで輪読会(「当日読書型」)を実施することとなった背景や目的は以下のとおりです。
目的
- 理解が薄い技術の理解度をチーム全員で深めて、チームの対応力を上げる
- 輪読会をファシリテートすることで、チームビルディングを学ぶ
- エンジニアとして、学ぶ習慣を身につける
- チームメンバーとの双方向のコミュニケーションを活発にする
このあたりを目的としました。
アノテーション のテクニカルサポートは、AWS を利用する多くのお客様への技術的なサポートをおこなっています。
また、多くのメンバーがテクニカルサポートノートにて AWS の利用で発生する課題解決のノウハウをブログとして発信しています。
しかしながら、各個人がすべてのサービスにおいて、何もかも理解しているわけではなく(もちろん幅広い技術的専門性をもつ優秀なメンバーもいます)得意な分野やサービスというものがあります。
さらに、技術要素の基礎的な知識が不十分であり、そこが原因となって不得意や不慣れなサービスを各個人がもっていることも事実です。
そのため、私の所属するチームで、各メンバーからヒアリングをおこない、理解の不十分な技術要素を学んでサポート対応力をアップさせるために輪読会をチーム施策として提案しました。
一方で、輪読会をおこなう目的は、あらゆる組織やチームによって異なってきます。
上述の目的以外にも考えられるはずですので、チームの課題を的確にとらえてみなさんに合った輪読会をデザインしてください。
やったこと
それでは、実際に輪読会を運営するにあたり、どのようなことを決めてどのような方針で進めたか、以下に記載します。
また、スケジュール感としては以下のように進めました。
ポイントは、初期段位はある程度の完成度で運営方法を決めてしまし、すぐやってみる方針としました。
また、輪読会が毎回開催された後にアンケートをとって、運営方法の改善のサイクルを回していくスタイルとしました。
本の選定
最終的に以下の技術書を選定しました。
選定方法は以下の様におこないました。
選定方法
- Google スプレッドシートに読みたい本を各自で出してもらう
- スプレッドシートの本について、どれくらい理解しているか理解度のチェックを実施(Google フォームで作成したアンケートを利用)
- 2のチェックした内容から理解度の低い本を 4 つ選び、Slack の Polly (投票アンケート機能)で最終的な本を決定
Google フォームのアンケートで実施する際の、本の理解度は以下の4つを基準としました。
■理解度 1. 理解している :理解できないことは殆どない 2. ある程度理解している :文献を調べつつであれば、理解を補える 3. あまり理解していない :概要は知っているが、具体的に説明するには最初から調べないといけない 4. 全く理解していない :名前くらいしか知らない
アンケートの結果、以下の4つの本が選定されました。
また、Slack の Polly でアンケートをとった結果、以下の様になりました。
なお、Polly はアンケート結果がすぐチームメンバーに共有されるため、最終的な本の決定の際に利用しました。
今回の結果から、GraphQL の基礎技術について知見を持っているメンバーが少ないことがわかりました。
そのため、上述の技術本を全員で読むことにしました。
初期運営方法の策定
前述の輪読会の本の選定を実施している中で、初期運営方法の策定をおこないました。
利用するツール
以下 2 つのツールを使ってオンラインで輪読会を実施
- Google Jamboard
- 読んだ内容のアウトプット用
- Google Meet
- 輪読会のミーティング用
基本方針
- その場で本を読んで、本から得た気づきをアウトプットする
- Google Jamboard に付箋を使って気づきをアウトプット
- ファシリテータが輪読会の進行をおこなう
- 時間は 40 分目安。ただし、キリが悪かったりしたら 1時間半まで延長OK
- 追加情報は、文字入力や画像を添付したりして補う
- 以下のタイムスケジュールで輪読会を実施
タイムスケジュール (所要時間合計:1回40分〜1時間半程度を目安)
所要時間 | やること | 名前 | メモ |
---|---|---|---|
1分 | オープニング | ファシリテータ当番 | 今日読むところの紹介 |
10分 | 読書 | 全員 | |
10分 | アウトプット 1 | 全員 | Jamboard へアウトプット議論の場 |
10分 | 読書 | 全員 | |
10分 | アウトプット 2 | 全員 | Jamboard へアウトプット議論の場 |
1分 | クロージング | ファシリテータ当番 |
上記の方針をもとに実施した結果、以下のようなチームメンバーからのアウトプットが得られました。
アンケートによるフィードバックと改善点
初回から回数を重ねる毎に課題が見つかりました。
また、毎回アンケートをとったことで、運営する側としても多くのフィードバックを得る事ができました。
チームメンバーからのフィードバック
- タイムスケジュールについて
- 前提知識にレベル差があるのでタイムスケジュール通りが難しそうに感じました。ただ、必要な時間と思ったので、慣れるまではタイムスケジュール通りにならなくてもOKと思っています。
- 時間として1時間半確保するのは良かったのですが、個人的に集中力が続きませんでした
- 輪読会運営について
- 付箋は担当者の色を決めた方がファシリテータがわかりやすいと感じました
- 事前に読んでおかないと内容が落とし込めて理解できない(しにくい)状態が発生すると思いました
- 本で取り上げられた検証部分も輪読会の中で時間が許す限りあればいいのかなと思いました(それが難しいなら事前に検証確認)
多くのポジティブフィードバックもいただく中、上記のようなフィードバックがみつかりました。
このフィードバックをもとに、改善点を整理しました。
改善点
- タイムスケジュールについて
- 読むスピードに自信のない方は事前に読んでくる
- 業務都合や集中力の持続なども考慮して輪読会自体を 30 分にする
- タイムスケジュールは詳細に決めずに柔軟にする
- 章や節ごとの単位で本を細切れに読んでアウトプットする
- 輪読会運営について
- 誰がアウトプットしたかわかるように担当の付箋の色を決めておく
- 検証が必要な内容は輪読会以外の時間で実施してもらい結果を次回共有してもらう
また、ファシリテータは主に私がやっていたのですが、私個人としても改善点をみつけました。
ファシリテータ目線の改善点
- アウトプットのやり方について
- チームが業務で活かせそうなことをアウトプットの主軸とした方がよさそう
- 例として、テクニカルサポートの場合は、以下が重要で業務へ活かせそう
- 今後のサポート対応で活かせそうなこと、トラブルシューティングに活かせそうな内容など
- 例として、テクニカルサポートの場合は、以下が重要で業務へ活かせそう
- アウトプットの種類によって付箋を貼る場所を分けたほうが、参加者がわかりやすい
- 例として、「業務で活かせそうなこと」「疑問箇所」など、付箋を貼る領域を分割する
- チームが業務で活かせそうなことをアウトプットの主軸とした方がよさそう
- 進行方向について
- ファシリテータは付箋をただ読まない。以下の例のような参加者への発信を促す
- 話を広げる(付箋を貼った人に深堀りして聞いてみる)
- 付箋の共通点をみつけてまとめてみる
- 今やっている業務と関連する事柄がないか問いかけてみる
- ファシリテータは付箋をただ読まない。以下の例のような参加者への発信を促す
[FIX]運営方法の確立
前述の改善点を運営方法に反映しました。
最終的にこちらの方法で、安定運用できるようになりました。
基本方針
- その場で本を読んで、本から得た気づきをアウトプット
- 読むスピードに自信のない人は事前に読んでくること
- ファシリテータが輪読会の進行をおこなう
- Google Jamboard に付箋を使って気づきをアウトプット
- 輪読会は 1 回「約30分程度」が目安(ただし、きりが悪ければ延長OK)
- 追加情報は、文字入力や画像を添付したりして補う
- タイムスケジュールは詳細に決めずに柔軟にする
- 章や節ごとの単位で本を細切れに読んでアウトプットする
- Jamboard は以下のような構成で、アウトプット先をわける
Jamboard の構成
- 以下3つの領域に分割
- 「気づきや活かせそうなこと」の定義
- 今後のチケット対応で活かせそうなこと
- お客様からお問い合わせがありそうな内容
- トラブルシューティングに活かせそうな内容
- 「疑問箇所」の定義
- 読んでいてよくわからない内容
- そもそも前提知識がない内容
- 「TODO」の定義
- 検証が必要な内容
- 輪読会の本来の目的から逸れるため各自で行って、やってみた人が後日発表
- 「気づきや活かせそうなこと」の定義
以上の最終的に確立した輪読会の方針をもとに実施した結果が以下の通りです。
やってよかったところ
チームメンバー目線
- GraphQL の基礎的な理解の助けとなりました
- GraphQLでクエリ実行時の型やクエリ実行結果の例などを学べました
- 輪読会参加からのアウトプットを意識していきたいです
- JamBoardでのやり取りがすごくいいですね
- 将来的には他チーム からも参加したい人を募れば 色々な意見が聞けるかと思いました
- アンケートを通して、運営の見直しなどしていただいてありがとうございます
アンケートの結果から、以上のチームメンバーからのポジティブフィードバックをいただきました。
本自体のことや輪読会運営のこと、また将来的に違うメンバーとやってみたいという意見までいただけました。
ファシリテータ目線
- 輪読会を通してチームメンバーへの問いかけ方のパターンを学べた
- あまりファシリテータ的な立ち位置は得意ではないと感じていたが、意外とやってみてスムーズにすすんだ
- メンバーの意見が活発になったときに喜びを感じた
今回の輪読会のファシリテーションは主に私がおこなったため、私個人の意見でしかないですが、上記のような点が良かったところです。
ファシリテータとして経験を積む場として、輪読会はとても良い機会なのではないかと考えています。
さいごに
チームの輪読会を企画・運営した身として、以下 2 つがアドバイスです。
- チームによって持っている課題が異なるので、輪読会のスタイル(事前読書型か当日読書型か、など)は目的に合わせて選択するほうがいい
- 輪読会はやってみないと運営の課題やチームにとってベストな方法はわからないので、フィードバックを都度もらい改善を早めるほうがいい
やはり、輪読会のスタイルはチームによって変わってきますし、やってみないとわからない部分もあります。
その際に、輪読会をやろうとおもった目的や背景も重要になってきますので、チームの課題を分析してどのように輪読会をデザインするか、考えて行く必要があります。
輪読会をやってみたい、今やっているという方の参考になれば幸いです。
参考資料
- 「エンジニアリング組織論への招待」で輪読会を一通り終えた話 - Libry Developers Blog
- 【輪読会の進め方】最速で本を理解する進め方?読書会と輪読会の関係とは
- 技術書の輪読会を定着させるまでの道のりで学んだこと - DMM inside
- ファシリテーターがいると良いこと | DevelopersIO
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